ゴルフをやってみる

ゴルフ【golf】
競技の一つ。十八のホール(穴)を設けた競技場で、クラブ(打球棒)でゴム製の小球をホールに打ち入れ、順次にホールを追って回り、総打数の少ない者を勝ちとする。


広辞苑・第二版補訂版より抜粋)


ゴルフを知らない日本人が↑これを読んだらどんなスポーツを想像するだろうか・・・。
それは良いとして、ゴルフである。
古くから「紳士のスポーツ」と呼ばれ人々に愛されてきた、ゴルフ。
最近では「タイガー・ウッズ」なる新星が現れ、益々その人気は上昇している。
しかし、持ち上げておいてなんだが、一方では「ゴルフ場の建設は環境破壊だ」という声もその人気に比例して増えている。だが、我々の言う「環境」には「人間の住む」という枕詞が必ず隠れている。だから「自然を大切に」と言っても、結局は自分のエゴでしかないのではないだろうか。否定はしないが。


それは良いとして、ゴルフである。
私にとってのゴルフとは、すなわち「マリオ」である。
ガキの頃、よくファミコンの「マリオ・オープンゴルフ」をやったものだ。ただし、今でもやっている。
しかし歳を取ると、ブラウン管上のゴルフでは満足しなくなる。
「そろそろ俺もゴルフを始めよう」
私の脳髄が訴えかけている。「生ゴルフ」と。


ある休日、私は友人のTとM氏を誘い、ゴルフに出掛けた。3人とも初心者だ。車はもちろんTのオデッセイである。私は自動車免許を持たない。クラブは父N氏のものを借りた。ついでにハンディカムも持っていく。
行き先は「○田屋ゴルフセンター」。名前の響きからも分かるように、打ちっぱなしである。いくら生ゴルフがやりたくても、いきなり18ホール回るわけにはいかない。物事には順序というものが必要である。
我々3人は、受け付けで打ちっぱなしの手続きを済ませ、2階の球を打つ場所(名前知らない)に躍り出た。
まずは球を集めなければならない。ゴルフには球が必要不可欠である。
早速Tが買い物カゴの様な容器に球を一杯に詰めて持ってきた。どうやら自動的に球を排出する装置があるらしい。その装置にTは球を流し込んだ。私はウッドの3番を握った。「ゴルフといえばウッド」だと私は信じている。
とりあえず素振りをしてみる。案外重たい。「紳士のスポーツ」というプライドの重みか。
ウォーミングアップを終え、遂に球を打ってみることにする。M氏はカメラをまわしはじめた。
クラブを握る手が汗でにじむ。心拍数も上昇している。これが「はじめてのゴルフ」か。
球に照準を合わせる。打つぞ。


クラブを振りかぶり
力いっぱい
スイング!


「ヴオッ」と空気が鳴動した。案外手応え軽いんだなぁ・・・
「下下」
下?
見ると3秒程前に打った筈の球が。
首を傾げながら更に振る。しかし球は微動だにしない。何故だ。


「ちょっと」
Tが口を挟んできた。
「握り方が違う」
「え?」
Tはアイアンを手にした。
「どう握んの」


「お前右利きだよな」
「ああ」
「じゃあ俺の真似してみ」
そういうとTはまず左手でグリップの上側を握った。よく見ると人差し指が立っている。私も真似をして人差し指を立てた。
「で、右手の小指を」
小指をを左手の人差し指にからめてグリップを深く握った。私も真似をする。
・・・・・おお! これは・・・・・・・・・


「な?こうやって左手を包み込むようにするとしっかり握れるだろ?」
Tはクラブを素振りながら言った。
確かにフィット感がかなり増した。これなら打てるかもしれない。
素振った。
うん、いい感じ。
球を再びティーにセット。
よっしゃ、打つぞ。
スウィング!


・・・私の打った球は低い唸り声をあげながら、一瞬で遥か向こうに
「下下」
「え?」
何という事だ。
球はまだティーの上に乗っていた。
手強い。さすが「紳士のスポーツ」と呼ばれるだけはある。不動の球を見下ろしながらそう思った。
「アイアンの方が打ちやすいぞ」
そこでまたもやTのアドバイスである。
「え?そうなの?」
「うん」
そうなのか。
ウッドを手放すのはいささか躊躇われたが、先程のアドバイスの事もある。私はクラブを渋々アイアンに交換した。
素振ってみる。成る程、こちらの方が振りやすい。
「あと、打った後は上半身が前を向くように」
そういうと、Tはバッグからクラブを取り出し、隣りで素振り始めた。そう言えばTも初心者なのだ。にしてはよく知っている。予習でもしてきたのだろうか。
いいとして、まずは球に当てる練習だ。
2人はクラブを振り続けた。M氏はまだカメラを回している。
一番初めに球を飛ばしたのはやはりTだった。
「キンッ」と清々しい音を立ててTの打った球は右前方に飛んで行った。
「やった!」Tはこちらを見て嬉しそうに叫んだ。何だか悔しい。
しかし私の方もどうにかコツらしきものを掴みはじめていた。まず、力み過ぎない事。集中する事。そして、球をしっかり見据える事。今思えば、こんな簡単なことに気付くまでかなりの時間がかかったのが悔やまれる。
そして遂に、私も球を打つ事に成功した。
アイアンで打ったにも関わらず、球は低空を右前方に飛んで行った。実にしょぼい球筋である。
だが私には球筋などどうでもよかった。私の頭の中では「ナイッショッ!」「ナーイッショッ!」と観客が拍手喝采である。嗚呼、これがゴルフだ!!
それから私は3回に1回のペースで球を打てる様になった。やはり人間、慣れである。
しかし思った方向にはなかなか行かないものだ。Tが言うには、球に当たる時のクラブの位置が重要らしい。成る程。
M氏もカメラを回すのを止め、クラブを振り始めた。曰く、「球をカメラで追えない」そうだ。そりゃそうだ。



それから2時間程クラブを振り、我々3人は「○田屋ゴルフセンター」を後にした。
疲れた。腕が痛い。手も痛い。が、それなりに楽しくもあった。今度行く時は手袋を持参しよう。


結論:ゴルフは難しい。
まず球に当てるのが難しい。遠くに飛ばすのが難しい。方向を定めるのはもっと難しい。ましてやバックスピンなど神業である。おそるべし、「紳士のスポーツ」。マリオは凄いな。